一年と二ヵ月
4
チラ はぁ…
チラ はぁ……
チラ
「ちょっと、いい加減うざいから。」
七海があたしの頭を叩く。
「痛っ。
…何が?何の話?」
「早紀、それ無意識にやってたわけ?」
――――無意識?
「名刺見て、はぁ。
名刺見て、はぁ。
もう、なんなのよ。」
ふん、と怒る七海。
あたし、そんな女々しいことしてたの?
我ながら気持ち悪。
「ごめんごめん。」
「もう、気にしてるの見え見え。
そりゃ食事なんて
いきなりだとは思うけどさぁ。」
「気にしてるっていうか…」
そう、今日は土曜日。
岡田さんとの食事の約束がある日。
電話では、全然気にしてなかったけど、
いざ当日になると、もう心臓バックバク。
親バカなパパのおかげか、
許嫁だのお見合いだの、
そんなたいそうな経験は皆無。
いわゆる、ハジメテ。
「あー、うー…」
ダメだ、頭が回転しない。
「キモいから。
ちゃんと、ロンパース着てきなさいよ?」
「分かってるよー」
はぁ、どうしたものか…
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