一年と二ヵ月


チラ はぁ…
チラ はぁ……
チラ

「ちょっと、いい加減うざいから。」

七海があたしの頭を叩く。

「痛っ。
…何が?何の話?」

「早紀、それ無意識にやってたわけ?」

――――無意識?

「名刺見て、はぁ。
名刺見て、はぁ。

もう、なんなのよ。」

ふん、と怒る七海。

あたし、そんな女々しいことしてたの?
我ながら気持ち悪。

「ごめんごめん。」

「もう、気にしてるの見え見え。
そりゃ食事なんて
いきなりだとは思うけどさぁ。」

「気にしてるっていうか…」

そう、今日は土曜日。
岡田さんとの食事の約束がある日。

電話では、全然気にしてなかったけど、
いざ当日になると、もう心臓バックバク。

親バカなパパのおかげか、
許嫁だのお見合いだの、
そんなたいそうな経験は皆無。

いわゆる、ハジメテ。


「あー、うー…」

ダメだ、頭が回転しない。

「キモいから。
ちゃんと、ロンパース着てきなさいよ?」

「分かってるよー」

はぁ、どうしたものか…


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