華と…
「それじゃ、華、学校が始まるまでには戻りなさい」
父は上機嫌でわたしの頭に手を置いた。
そんな仕草は、子供の頃以来で少し驚いた。
「操はんも、いつでも遊びにいらしてくださいね」
「優子さんも、是非、東京にもお出でくださいな。
じゃ、華、東京で待ってるわね」
そんなやり取りの後、両親は東京へと帰っていった。
健一さんの亡くなった今、母の帰る場所は父のところしかないのだ。
母の様子は落ち着いていた。
少しだけ、表情が柔らいだような気もした。
わたしは、これを機に、両親二人の関係がもっと楽なものになるといいと願わずには居られなかった。