華と…
「華、見て」
そう言って斜面に手を伸ばした雄一が、積もった雪をそぉっと手で除いた。
ガラスのように透き通った雪の直ぐ下には、黒い土が覗いていて、そこには小さな緑の蕾が沢山生えていた。
「これが、ばっけ。
ふきのとうだよ。
南斜面の雪の下は、溶けかけた雪の温室効果で、もうすっかり暖かい春なのさ。
凄いだろ。
俺も初めて見た時は驚いた。
だから、絶対、華にも見せてやりたくて」
嬉しそうに振り向いた雄一と、黒い絨毯の上に広がった緑の光景。
わたしの目には、そのどちらもが新鮮で。
「綺麗……」
わたしは、すっかりその光景に心を奪われていた。