華と…



「華もそこの雪をどけてごらん」



言われるままに、手を伸ばし、斜面の雪をそっと除いた。


――あ、あった。


「ここが我が家秘伝のふきのとう畑。

他言無用。

絶対に秘密だぞ」


「これって食べられるんだよね。

ねぇ、どうやって食べるの?」


「てんぷらにしたり、フキ味噌にしたり。

親父は、春、このふきのとうを食べないと生気が戻らない、なんて大げさに言ってる。

それくらい、春の匂いが強いんだ。

こんな雪の下にも、確実に春は育ってる。

白くクリアされたこの一面の雪の下から、緑が芽吹き、新しい命が生まれるんだ。

また一から始まる。

全てはその繰り返しなんだ」


「そうだね……」


わたしはふきのとうを一つ、土の中からもぎ取ると、そっと匂いを嗅いでみた。
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