華と…
「それと、恋の話とは関係ないと思うんですけど……」
「そうですね……
わたしと彼女の話をいたしましょう。
彼女は、名前を澤田真由美というのですが、わたしと真由美は所謂幼馴染だったのです。
家が隣同士で、生まれた時から家族のように育ちました。
わたしの家は一人親で、母は旅館の下働きをしていました。
だから、家にいることも稀で、わたしは何時も真由美の家に上がりこんでは食事を食べさせて貰っていました。
ところが彼女の家を突然不幸が襲ったのです。
彼女の父親は腕の良い指物職人だったのだですけれど、ある時事故で右手の自由を失ってしまったのです。
それからというもの、彼は酒に溺れ、身体を壊し、終には癌に侵された。
肝臓癌でした。
……華さん、こんな話を聞いて、何かお役に立ちますか?」
強張ったわたしの表情を察してか、坂本が話を切った。