華と…
駅前のロータリーには、大きなランドクルーザーが停まっていた。
雄一は、真っ直ぐにその車に歩み寄るとドアを開けた。
「さ、どうぞ、お姫さま」
「なにそれ、気色悪いよ」
わたしは、何時になくおどけた様子の雄一に向かって毒づいた。
「遙々遠く、最果ての地からやってきた姫を、ビップ待遇でお迎え致します」
「雄一、車、運転できたんだ」
「ま、一応免許は持ってる。東京では必要ないけどな。
これは親の車。山菜採りには、この車が一番なんだとさ」
「だよね。東京じゃ、電車のほうが便利だもん」
「田舎じゃ、車がなきゃ始まんない。それに一本道だから、迷うこともない。
ほら、早く乗って」
グズグズしているわたしを雄一が急き立てた。
助手席に乗るなんてなんだか恥ずかしい。
初めてずくしで、居心地が悪かった。
「ほら、シートベルト締めて。
ペーパードライバーの運転なんだ、一応、死を覚悟してくれたまえ」
「やめてよ、縁起でもない」
わたしは、軽く雄一の左腕を叩いた。
「華、家に行く前に寄りたいところがあるんだ」
急に真面目な顔になった雄一が、わたしのことをじっと見た。
「別にいいけど……、どこへ?」
「深雪の墓参り」
雄一は一言そう言うと、前を向いて車を走らせた。