華と…
店を継ぐ、という伝統に拘ったのは、二階堂呉服店が代々続いた老舗だから、という理由だけではなかった。
古い街並みを残すこの場所に、店と共に生き続けたい。
ここに居ることが当然で、他で生きる自分を思い描けなかったから。
雄一は、誰よりも、わたしのそんな気持ちをわかってくれていたんだ。
雄一をとるか、店をとるか。
そんな究極の選択を迫られたら、わたしがどうするか、どうなってしまうのか、一番よく理解してくれていたんだ。
道の両脇に迫る看板と、連立する電信柱の間から早春の青空が覗いていた。
嗚呼……
わたしってなんて馬鹿だったの!