華と…
「華、早く救急車を!」
気が動転したわたしは、その場に固まって身動きできなくなっていた。
「華!」
父にもう一度呼ばれて我に返った。
居間に駆け込み受話器をとった。
――嗚呼、なんてこと……、こんなことが起こるなんて……
それから、何がどうなっったのか……
記憶の糸を手繰り寄せようと思っても叶わない。
わたしは、すっかり冷静さを失っていた。
あんなに、疎んじていた母が、こんなにも自分の中で大きな位置を占めていたなんて。