華と…
うろたえて落ち着かないわたしとは違い、父は母が横たわる病院のベットの脇で、じっと母の手を握り動こうとはしなかった。
あの時、母を抱き上げた父の力強さと、今目の前の忍耐強さ。
父がこれ程までに、母に対して一途な態度を見せたのは初めてだった。
わたしが知る限りにおいては、だけど……
「お父様、少し休まれた方が……
この病院は完全看護ですし。
何か変化があったら直ぐに連絡して下さると看護の方達もおっしゃって下さってますし……」
わたしが、いくら促しても、父は母の傍を離れようとはしなかった。
「操が目覚めるまでは、わたしはここに居るよ。
華こそ一度帰りなさい。
雄一くんも心配してるだろう?
こちらの状況を、坂本にも伝えてくれないか?
わたしは暫く操の傍にいるから、店を頼むと……」
父の意思は固かった。