華と…



「わたしが手を握っていると、脈拍が安定するんだ……」



愛する者の温もりを、ただ必死に追い求める弱弱しい姿に胸が詰まった。


「お父さん、それなら尚更、お父さんが身体を労わらないと。長期戦になると、持ちませんよ」

わたしの後ろから、雄一が父に声をかけたけれど。


「だが……、操が目を覚ますまでは、傍にいたいんだ……」


それでも父は、首を縦には振らなかった。


「じゃあ、華がいる間だけでも、少し休まれては如何ですか?

ちょっとした夜食も、用意してきたんです」


「魚正の折り詰め。お父様、お好きでしょ」


「気が利くな。

そういうとこ、華はお母さんに似てきたな」


少し顔を綻ばせて気の緩んだ隙をついて、雄一がわたしの背中を押した。


「ほら、俺がお父さんの相手してるから、華はお母さんのとこへ行ってあげて」



わたしは、そんな雄一の何気ない言葉の奥に、言いようのない違和感を感じていた。
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