華と…


「お父様……、お母様、目覚めたみたい。

手を握ったわたしのこと、華だって、わかってらした。

でも、また眠ってしまわれたわ……」


わたしの言葉の中から、父は母の状況だけを読み取って、


「操っ……」


父は待合のソファーから立ち上がると、急ぎ足で病室へと戻っていった。


「華? 何があった?」


母が目覚めたことよりも、わたしの意識は、見たこともない幻の父の姿を追い求め飛んでいた。


それは、過去と現実を繋ぐ一本の細い糸で繋がっているはずだと。


わかろうと、してはみたけれど。


母の姿を追う、二階堂の父の後姿が、どうしても重なって見えてしまう。
< 169 / 202 >

この作品をシェア

pagetop