華と…
「お父様……、お母様、目覚めたみたい。
手を握ったわたしのこと、華だって、わかってらした。
でも、また眠ってしまわれたわ……」
わたしの言葉の中から、父は母の状況だけを読み取って、
「操っ……」
父は待合のソファーから立ち上がると、急ぎ足で病室へと戻っていった。
「華? 何があった?」
母が目覚めたことよりも、わたしの意識は、見たこともない幻の父の姿を追い求め飛んでいた。
それは、過去と現実を繋ぐ一本の細い糸で繋がっているはずだと。
わかろうと、してはみたけれど。
母の姿を追う、二階堂の父の後姿が、どうしても重なって見えてしまう。