華と…


優子お母さんとわたしが病室に入ると、明らかに動揺した母の様子が気になった。


――仲が良かった、んじゃなく、仲が悪かった?


わたしの中に浮かんだ素朴な疑問。


「華、冷たいものが飲みたいわ。

大通りの向こうのカフェで、抹茶オレを買ってきて貰えるかしら?」


疑問は、更なる謎を含んで増幅していた。


――わたしを遠ざけて、二人きりでしたい話って何だろう?


何か割り切れない気持ちで、カフェに向かった。

本当は母の期待したように、ゆっくり歩いて、二人きりの時間を作ってあげるべきだったのかもしれないけれど。

わたしには知る権利がある、と思ったのだ。


点滅する青信号を走って渡り、息せき切ってカフェに滑り込む。

運よく客はまばらで、カウンターに列は無かった。


「……アイス・抹茶オレ、二つ、持ち帰りで……」


咽る息の中、やっとのことで声を出した。


「お待たせしました」


手渡された紙袋を持って、わたしはまた走り出す。


なんでこんなこと……

と思うけど止まる訳にはいかなかった。


エレベーターに滑り込み、息を整える。

病院のエレベーターの扉は開閉がゆっくりで、苛々した。

扉が開く度に、唇を噛みしめる。


――早く、早く……

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