華と…


「華はん?」


仕切りカーテンが音をたてて引かれ、驚いた優子お母さんの顔が現れた。


「何にも知らなかったのは、わたしだけで。

みんなして、わたしを腫れ物に触るように眺めてたんだ」


出てきたのはそんな保身を図る自分勝手な言い分で。


「華はん、みんなあんさんを大切に思っとるんや」


「知らない方が幸せだと?

それって、健一さんの優しさと同じじゃない?

何が幸せかは、わたしが自分で決める。

ねぇ、お母様?」


わたしの問いかけに、母は応えようとはしなかった。

その目はじっと、わたしと雄一を捕らえてはいたけれど。


「馬鹿!」


母の沈黙に耐え切れず、その場を逃げ出そうとしたわたしを、そう言って制したのは雄一だった。


「今、一番この状況に心痛めてるのは誰だと思ってる。

それはお前じゃない。

お前のお父さんだ」


雄一の言葉に真っ先に反応したのは、わたしではなく母で。


「あなた……」


母の頬を涙が伝った。
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