華と…



俺が十歳、深雪が八歳の時、両親が再婚した。



深雪の母、つまりは今の俺のお袋優子は、実家のトラブルが元で離婚したと聞いている。

何でも、彼女の父親が多額の借金を残して死んだとか。

彼女には兄が一人いて、その借金は主に彼が背負って返済をしていたのだそうだけれど。

それでも何度か返済が滞って、彼女の家庭にまで借金取りが押し寄せて来たのだそうだ。

離婚した後、彼女は居酒屋で雇われ女将として働いていた。

見た目は女性らしい美しい人なのだが、なかなか男勝りのきっぷの良さがあり、評判の女将だったと聞く。


そこに、我が父雄蔵が入れ込んで通い詰め、落とした。


お互い再婚の子持ち同士というのも何故か幸いして、遠く離れた秋田の地に嫁ぐという地の利も背を押した。

父は彼女の兄に借金返済の援助を申し出たが、断られた。


「妹と姪を宜しく頼みます。自分にはそれで十分です」


そう言って、彼は深く頭を垂れたそうだ。
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