華と…



深雪は、痩せて色の白い大人しい女の子だった。



生まれつき病弱で、よく熱を出した。

それでも、素直で可愛い深雪は、みんなの人気者だった。

秋田に越して、野山を駆け巡り、深雪はそれなりに元気な少女に成長した。

母親譲りの美しさは群を抜いて際立って、町でも評判の美人だった。

俺もそんな妹が自慢だった。

田舎の世界は狭い。

地元の中学を卒業して、深雪は俺と同じ県立高校に入学した。

一際目立つ深雪の存在に、俺の学生生活は俄かに色めきだった。

周りが彼女を求めて、騒ぎ出したのだ。

俺は複雑な感情に悩まされ始める。

深雪は妹であって、血の繋がった本当の妹ではない。

日に日に美しく成長して行く異性を間近に見て、心奪われない若者がいるだろうか。

俺の中に芽生えた、おぞましい感情。


嫉妬。


それは、妹を奪われることに対する嫉妬なのか、それとも好きな女を奪われることに対する嫉妬なのか。


狭い世界の中で繰り返される問い。

未熟な俺に、その答えを見つけることは難しかった。
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