華と…



そんな中、深雪が倒れた。



はじめは足が痛いと言って、びっこを引いて歩く程度だった。

成長期にはよくあることだと、町医者は最初、真剣に取り合わなかった。

だが、次第に深雪の食欲が落ち、頭痛がすると寝込むことが多くなり。

周りの者が心配して大学病院での検査を薦めてくれたのだ。


検査の結果は、多発性癌。


骨肉種に始まり、肺に転移し、脳にも腫瘍が認められた。


もう既に、手の施しようがなかった。

その間、僅か三ヶ月。

目の前で、木が倒れるように崩れ落ちる深雪の身体を抱きしめて、俺は泣いた。


深雪が亡くなるまでの二ヶ月余り、俺はずっと彼女の傍にいた。


「お兄ちゃん、そばにいて……」


そう言って、深雪が俺の手を離さなかったから。


あれは、恋だったのかな?


俺はずっと、それを恋だと思っていた。

深雪が死んだ時、もう誰も愛することは出来ないと思った。

そうすることが、深雪への愛の証だと思っっていた。



最後まで、深雪は俺のことを兄として慕ってくれていたのに……
< 191 / 202 >

この作品をシェア

pagetop