華と…
そんな窮状の中、健一さんは操さんとの結婚など、考えることはできなかったのだろう。
一方操さんも、父親想いだった健一さんの心情を思い、彼の気持ちを尊重してあげたいと思ったに違いない。
そして、健一さんは、操さんへの想いを断ち切ろうと、敢えて彼女に辛くあたった。
次第に二人の仲は、不自然にすれ違いを見せ始めた。
そんな二人の様子を、お袋はやるせない思いで見つめていたという。
それから程なくして、操さんは親の薦めた縁談を受け、東京へと嫁いでいった。
それが二階堂一徹、華の父親だ。
それ以降、操さんは東山家との連絡を完全に断ち切った。
お袋が手紙を書いても、返事が返ってくることはなかったという。
きっと嫁いだ東京で幸せに暮らしているのだろう。
お袋はそう自分を納得させ、次第に彼女のことを頭から消していった。
健一さんが事故で亡くなったという知らせにさえ、操さんは出向いてくることはなかったのだ。