華と…
「んだな。悪かったす。
雄一がおなごの子どご連れてくるなんて、初めてのことで。
わしらも喜び過ぎたな。
まぁ、秋田どこ楽しんでいってけれ」
「うん、そのつもり。
今晩は大曲の花火だし。
親父、車借りるよ。
今晩は大曲に泊まって、明日、田沢湖回って帰ってくる」
「もう、お出かけなさるのどすか?」
「二人っきりに、させてよ。せっかくなんだからさ」
「今時の若もんは、すすんどるのぉ。
ま、事故だけは、気どごつけて」
わたし達は、名残惜しそうな雄一のご両親に見送られて実家を後にした。
「いいの?
ご挨拶もそこそこで、なんか逃げるようだったよ」
「いいんだよ。逃げて正解。
長い付き合いだから良くわかる。二人とも、お前のこと気に入ったみたいだ。
あのままあそこに居てみろ、夕方には結納の話になってるぞ」
「わたしが深雪さんに似てるから?」
「あの二人はそういう族(ヤカラ)じゃない。
見た目によらず苦労してるんだ。人を見る目はあるよ」
「って、どういう……」
「二人とも華のことを気に入ったってこと。
自分の娘と他人を同一視するなんて愚かな真似するのは、若輩者の俺みたいな奴のすることさ」
そう言って笑った雄一の目には、身の置き所のなくなって小さくなったわたしの姿が映っていた。