華と…
「まだ時間もあるし、折角だから華に俺の母校とか見せたりしちゃおっかな」
雄一が笑って話しかけてくれたけど、わたしはモヤモヤとした思いに包まれて、なんだか素直に楽しめなかった。
「ほら、ここが俺の通った小学校」
「ここが中学」
「で、これが高校。
華、ちょっと降りてみないか」
車でグルリと学校巡りをした終点は、一際大きな校舎の高校だった。
――深雪さんとの、最後の思い出の詰まった場所か……
なんだか、複雑な思いだった。
「わぁ、グランド広いんだね」
「まぁな。土地だけは腐るほどあるからな。
冬は雪で屋外はほとんど使えないから、春夏秋のシーズン中は、野球部もサッカー部も他のスポーツ部も同時に練習ができるようになってんだよ」
その日もグランドでは、ユニフォームを着た生徒達が練習をしていた。
「雄一!」
遠くから、雄一を呼ぶ声がして、一人の選手が走ってこちらに向かってきた。
「やっぱり、雄一だ」
「おう、川東(カワヒガシ)」
「なんだ、帰ってきてたのか。で、そちらの彼女は?」
と、彼の目がわたしを見るなり固まった。
「みゆき?」
「な、わけないだろ。こっちは、俺の彼女。二階堂華さん」
「華です」
わたしはペコリと頭を下げた。
「悪い、あんまり似てたもんで」
「ええ、知ってます。みなさん驚かれるんで、もう慣れました」
わたしは、笑って言えだだろうか。