華と…
「今時分に秋田に来たちゅうことは……
あ、そっか、大曲の花火だべ」
「まぁな、これから向かう予定」
「そっか、ま、楽しんでこいよ。
大曲の花火は日本一だっぺ」
「ふふ、みなさんにそう言われます」
みんなが自慢する、大曲の花火が、なんだかとても待ち遠しくなっていた。
「今晩は泊まりか? 山内のとこ?」
「ああ、そのつもりだけど」
「今日は人出が多いからなぁ。
よっしゃ、わしが一本電話どこ入れちょいたる。まがせておけ」
「恩にきる。サンキュー」
「こいつは、どごまでもキザなやっちゃ。なぁ、華さん」
「え、そうなんですか?」
「あぁ~っ、もう、んだどもら、東京もんは好かん。
おら達田舎もんどこ馬鹿にしとるす」
「川東!」
「早く行け。山越えは時間食うぞ」
彼はそういい捨てると、走って練習に戻っていった。
「あいつは、この高校で野球のコーチをしてるんだ。
美雪とも小学校から一緒で、仲が良かった。
お前の姿を見てられなかったんだろ。
悪気はないんだ、気にしないでやって」
わたし達は、少し遅い昼食に秋田名物物の稲庭うどんを食べると、その足で大曲へ向かった。