華と…
「って、結局3時間もかかっちまった。
川東の言う通り、あの後すぐ出発すれば良かったな」
わたしを見る雄一の目には、少し落ち着きを取り戻したわたしの笑顔が映っていたけれど。
まだ少し、心から笑える気分になるには時間がかかる。
車が橋を渡り川沿いに近づく頃には、もう日はどっぷり暮れていた。
花火大会は、もう始まっていた。
「大丈夫、でかいのは最後だし、二万発も上がるんだ、まだまだこれからだよ」
駐車場に車を停めて、雄一と手を繋ぎ、ゆっくりと歩き出した。
大きな音に驚いて見上げると、空には、歓声と共に花火の輪が打ち上っていた。
「わぁ~綺麗……」
「華、上向いて歩いたらこけるぞ。
ほら、あっちの川原で座って観よう」
雄一に手を引かれて、花火の降り注ぐ見知らぬ夜の街を歩いた。