華と…
上野駅で、秋田行きの寝台特急のチケットを買った。
十九時発、秋田行きのブルートレイン。
去年のあの日と同じ列車だ。
駅弁を買って、飲み物を買って、旅の雑誌と雄一の家への手土産を買うと、わたしは列車に乗り込んだ。
自分のコンパートメントを見つけ、一息つくと、携帯に着信があったことに気付いた。
メールボックスを開くと、案の定、母からのメールが届いていた。
『華、あなた今何処にいるの? 坂本さんがお待ちです。母』
母にさえ、何も告げずに家を出てきたことを思い出した。
『しばらく家には戻りません。華』
そっけないメールを返すと、それっきり、母からの返信はなかった。
――お見通しか……
いつも冷静な母が、父と坂本さんを執り成す姿が目に浮かんだ。