華と…
全てを覆い隠された、純白の世界。
醜い物も美しい物も、分け隔てなく覆い隠す白の世界がそこにあった。
わたしの中の焦りも、降り積もる雪に覆われて、次第に熱を奪われていった。
<ガシャ>と、音がして車両のドアが開き、車掌が通路を歩いてきた。
「あの……、今何処ですか?
列車はこの雪で動くんでしょうか?」
「今、本庄だで。
こっちゃある吹雪で視界が悪くて、暫くこっちゃある駅で停車こぐがらよ。
な、さ、遅れはほんの一時間ほどだで」
車掌の歩き去る後姿を目で追いながら、ほっと胸を撫で下ろし、わたしは携帯を開いた。
雄一の番号を呼び出してみるものの、どうやら圏外らしく繋がらない。
取りあえず、メールを一本打った。
『今、秋田に向かうブルートレインの中です。華』
――そうだ、雄一の実家に電話してみよう。
兎に角、わたしが今、ここにいることを誰かに伝えなければと思った。