華と…


「雄一は、華はんが秋田に来るのを忘れとったんでしゃろか?

昨日から、横手のかまくら祭りに出かけとるんですよ。

家の用事でお神酒を届けるついでに、祭り見物もしてくる言うはって」


「横手? 遠いんですか?」


「そうどすなぁ、列車で一時間ほどどす。

でも、雄一は車で出かけとりますよって。

この雪で国道は封鎖されとるゆうてましたから、雪が止むまで帰れまへんなぁ。

祭りは明日からどすから、華はんも、横手へゆきはったらいかがどす?」


「横手へ?」


「列車はちょっとやそっとじゃ運休しまへんよって。

雄一に早う会いたいでっしゃろ、華はんは」


「お母様……」


「声がそう言うはってますよって。

こんな雪ん中、夜行列車で秋田まで来なはるなんて、何かおましたか?」


「ええ……、まあ……」


「お話は戻りはってからゆっくり伺いましょ。

兎に角、真っ直ぐ横手に行きなはれ。

雄一の宿の連絡先、教えますよって」
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