華と…
「そういう畠山くんこそ、こんな地味な同好会に。何で?」
わたしは更なる攻撃を試みた。
もうこれ以上、わたしの方に近づいて欲しくなかったのだ。
「あ、俺はさ、純粋に歴史に興味があるだけだよ。
特に地方史にね」
「地方史?」
「そう。
大きな歴史の中で埋もれてしまった、それぞれの地方で起きた史実にこそ、歴史の本当が隠されてる、そう思うんだ」
真っ当な答えに、驚いた。
でも、成るほどなと頷いた。
「あ、わたしもその考えには賛成。
わたしも歴史を動かすような大人物より、脇役の方に興味が沸くよ」
わたしは、その時、この彼の中にわたしと同じ匂いを嗅ぎ取ったんだ。
自分の存在をなるべく目立たなく、無難な位置に留め置こうとする葛藤が産む違和感。
わたしの場合、それは、代々続く呉服問屋の跡取りという生まれと、母から受けついたこの容姿だった。
わたしは、その時から彼の違和感に興味を持った。