華と…
着の身着のままで家を飛び出して秋田に来たわたしを、雄一の家族は、何のわだかまりもなく受け入れてくれた。
雄一が家の手伝いで配達へ出かけると、わたしは母屋の一角に設えられた即売所で店番をした。
造り酒屋の雄一の家は、本来は小売はしないのだけれど。
酒蔵を見学に来る観光客や、絞りたての生酒を目当てに来るお馴染みさんの為に、小さいけれど店を開いているのだ。
「やっぱり、若いお人が店に立つと様子がよろしいわ」
と、優子お母さんはとっても喜んで下さって。
「そろそろ、お茶にしましょか」
と、時折声をかけて下さって、その度にいろんな話をして頂いた。
雄一の幼い頃の様子とか、秋田と京都の違いとか、雄蔵さんとの馴れ初めや、亡くなった深雪さんのこと。
少しづつ、わたしと雄一の距離を埋めるように……