華と…
「華、帰るぞ!」
父はわたしの顔を見るなり、腕をつかんでそのまま連れ去ろうとした。
外は今日も雪が降っている。
薄着のわたしをそのまま外へ連れ出そうなんて、無茶な話だ。
「あなた! ここまで来たんですもの、きちんと話をつけなと、後を引きますよ」
取り乱した父を諫めたのは母だった。
「そうだな……」
父は渋々あたしの腕を離すと、
「荷物を纏めてきなさい。今日、東京へ帰るぞ」
そう冷たく言い放った。
「嫌よ、わたしは帰らない!
お父様たちの言いなりにはもうならない!」
つかまれた腕を振り払い、わたしはきっぱりと父の命令を拒絶した。
「華!」
大きな声とともに父の大きな手が、わたしに向かって振りかざされた。