華と…



「ご両親、いらしてるんだべ? さあ、中さ入ろう」



大きな手が襖にかかって、わたしの目の前の視界が開けた。


皆が一斉にこちらを見た。


「遠くから、よくおいでくださいだったと。

オラが、雄一のおどの雄蔵だで」


首に巻いた手ぬぐいを無造作に抜き取って、雄蔵お父さんが深々と頭を垂れた。


「あなた。まず、お座りなさいませ」

「んだな、高いとこから失礼しただす」


優子お母さんに促されて、雄蔵お父さんが入り口近くに座った。


わたしは、盆を抱えたまま身動きすることができない。



だって……、父と母の目がわたしをじっと睨んでいたから。

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