ビターな恋
「じゃあ…これ‼」
「はいよ」
俺は仁美が差し出したDVDのパッケージを受け取る。
それは、仁美が苦手なはずのホラーだった。
「…仁美ってホラー大丈夫だっけ?」
「苦手だったけど、友達の影響で見るようになったの」
そういう仁美の表情から、その『友達』が男だということは簡単にわかった。
「そっか」
こういう時、普通の彼氏なら嫉妬をするんだろう。
でも俺はしない。いや、できないんだ。
俺と仁美の間の、そういった特別な物…恋愛感情はとっくに死んでしまった。
今の俺たちの関係は、『恋人』というよりは『仲の良い友達』に近い気がする。
そんなことを考えながら、俺はDVDレコーダーを起動させて、DVDを入れた。
しばらくすると画面が真っ暗になり、スプラッタな題が現れた。
金髪碧眼の外国人の美人が逃げ惑っているシーンから、映画は始まった。