ビターな恋

「なんでもないよ」


「また亜梨紗ちゃん?」

仁美は茶化すように笑う。


「違う、亜梨紗じゃなくて、つばさの方

あいつさ、さっきキッチン行ったらグラス洗ってたんだよ。


で、多分今は、起きた亜梨紗に怒られてる」


俺は亜梨紗に、亜梨紗よりも大きいつばさが怒られていることを想像した。


なんだか笑えてくる。


「つばさちゃんかー

キレイな子だったねぇ…」


「亜梨紗の方が可愛いけどな」


俺がそう言うと仁美は小さな声で


「……まだそこまでの気持ちか」


「何が?」


「ううん‼なんでもない‼」


仁美は笑みを浮かべてごまかした。


しかし、すぐにその顔からは笑みが消え…


「……ねぇ、京平。大事な話があるの」


「…なに?」


大体予想はつく。


きっと別れ話だ。
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