ビターな恋
つばさside
「ご飯よー」
亜梨紗のお母さんが、大きな声で私達を呼ぶ。
外はすでに暗く、時刻は午後六時半を回っていた。
「今日はハンバーグかぁ‼お母さん張り切ったね‼」
亜梨紗が席についた。
「当たり前でしょう?つばさちゃんがいるんだもの‼」
亜梨紗のお母さんはご飯をよそりながらそう言った。
「美味しそうですね‼」
私は笑いながら、亜梨紗の隣に座る。
ご飯を載せたトレーを運びながら
「京平ー!?ご飯よ‼」
階段に向かって亜梨紗のお母さんが叫んだ。
けれど、何も反応がない。
「……おかしいわねぇ」
「あ、私呼んできますよ」
私は席を立って、リビングを出ようとした。
「あら、いいわよ。あとで私が…」
「いえいえ。
京平さんの部屋って亜梨紗の向かい側ですよね?」
「ええ。…じゃあお願いするわね」
「はい‼」
私はリビングを出て、階段を上がり、京平さんの部屋の前に立った。
ノックをしながら
「京平さーん」
と声をかけるが、返事がない。
「……失礼します」
ゆっくりドアを開けてみると、ベッドの上で仰向けになっている京平さんがいた。