ビターな恋
座りながら大きく伸びをし、体を左右に揺らす。

頭上で組んでいた手を離して、ダラン…と垂らす。


もう課題に集中することはできなさそうだった。

「…風呂でも入るかなあ」

そう呟いた次の瞬間には、立ち上がっていた。


着替えを用意してから、部屋を出て階段を下る。

風呂場に向かう前にリビングに顔を出すと、そこにはテレビを見ている母さんしかいなかった。

「あれ、亜梨紗達は?」


俺がそう声をかけると、少し驚いた母さんが

「部屋に居るはずよ?ガールズトークでもしてるんじゃないかしら?」


「ふうん…」


「京平は?お風呂?」


「ああ」

短く答えてリビングを出て行く。


亜梨紗達、隣の部屋にいたのか。気づかなかった…

そんなことを考えながら服を脱いでいく。


風呂場に入り、熱めのシャワーで体を洗っていく。


一通り全身を洗い終えて、湯船に浸かった時、不覚にも

「ああ……」

と声が出てしまった。


よっぽど気を張っていたのか、俺は。

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