ビターな恋
お昼のパスタを三人で食べながら、ふと思い出す。
「そういえば、起きた時に京平さんが出て行くのを見たんですけど…」
「ああ‼お兄ちゃんはね、仁美さんとデートだよ」
「…そうなんだ」
胸にズキン、と鋭い痛みが走る。
「今日で仁美さん帰っちゃうし…またしばらく遠距離かあ…大変だよねーお兄ちゃんも」
亜梨紗がパスタをフォークに巻きつけながら小さいため息をこぼす。
…昨日の夜、私は京平さんの前で泣いてしまった。
怖い夢を見たくらいで泣くなんて、おかしくて笑っちゃうのに…京平さんは何も言わずに頭をポンポン、と撫でてくれた。
《…あれは、ずるいよなあ…》
少し顔が熱くなる。
私の中で芽生えかけているこの気持ちは…潰しておかなくちゃいけない。
だって京平さんには仁美さんがいて…幸せで…
好きな人の幸せを、ぶち壊すなんて、よっぽどの覚悟がないと…
「つばさちゃん?」
亜梨紗のお母さんの声ではっとする。
「どうかした?パスタ…口に合わなかったかしら?」
「いえ、とっても美味しいですよ‼」
私は笑って、パスタを口に運ぶ。
「そう、ならよかった」
亜梨紗のお母さんも嬉しそうに笑った。
でも…
ごめんなさい、亜梨紗のお母さん。今の私は、このパスタの味が…よくわかりません…