ビターな恋
「でも確信があったわけじゃないよ。昨日言ってた、仁美にホラーを観る影響を与えた友達…か?」
「そう、その人」
仁美はゆっくりと頷く。
「…本当は今日、別れ話をするつもりじゃなかった。今度にするつもりだった。でも私が今度ここに来れるのはいつかわからない…」
「それで今日呼び出したのか」
「ううん、それだけじゃないよ。
昨日、わかったの。京平の気持ちも変わっているって」
「俺の気持ち…?」
変わっている…のか?
「京平は気づいてない…のかな。それとも気づかない振り?」
「待て待て。本当にわからない」
俺が頭を抱えると仁美は笑いだした。
「お前…笑い事じゃないだろ」
「ごめんごめん。でも本当に気づいてないんだって思うと…」
仁美は声を押し殺しながら笑う。
…こんなに明るく別れ話をしている恋人も珍しいな、と我ながら思ってしまう。