Under Tamiflu 灰色の天使
(・・もう救い様もねえ)

この女に嫌悪感を抱く事しか
出来そうもねえよ。

生活指導でもねぇしソリャ
自由なのかもしんねえ。

だけど"心"を泣かせてまで
しなくちゃいけない事なのか?

「ムダ足を踏ませてくれたな。
お礼にショウに連れてってやる。」

怒りはあっても感謝など
あるものか。 こりゃ皮肉だ。

ベッドに近づき彼女の手を取る。
女は何も云わず、薄く開いた唇で
身を起こしゆっくり見上げてた。


「目を瞑ってろ・・。」

俺は仕方なく指を弾き鳴らす。

「・・・冷たい!」

「そりゃそうさ、見てみな。
お前の為に用意してやった。」

「・・・!!」

「シャレてるねえ、高層ビルの
の空中庭園でアイスショウとは。」


俺がジャンプして来たのは
まだ未完成の逆Uの字型をした
日本一高いであろうビル屋上。

いつの間にか女は俺の手を離れ、
居場所をベッドから
氷の板の上に移されてる。

上空から見りゃ、
巨大な丸い穴の真ん中に架かる
透明な板の橋の上の黒い点。

馬鹿でかい丸いレンズの上に乗る
顕微鏡のプレパラートの
アリにも見える。

その、
"黒い点"や"アリ"である彼女は
冷たさを忘れるかに穴の外に立つ
俺を呆然と見てた。
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