Under Tamiflu 灰色の天使
枝みたいに細い手でマスクを
取ろうとしたのでずらしてやる。


「U・・T・・。」

「ああ、来たぜ・・。」

「ふ、アタ・・シ、酷いや・・ろ」


なおも見せようとする笑顔、
表情筋を動かすのも
もう辛いだろうに。

髪を撫であげてやりながら
指で頬を摩り笑い返してた。


「バカ云え・・いい女だよ・・」


魂さえなけりゃ・・
この胸も痛まずに済んだものを。


「ふふ・・約束・・アタシ・・
がんばった・・で?」

「シィー・・もう喋るな・・ああ、
知ってるさ・・いい子だったな・・。」


奈津子はコクと頷き
ホッとした様に顔の力を抜いて
そっと目を閉じる。

待っていたんだ・・。

溜息を隠した俺は静かに腰を上げ
彼女の小さくなり過ぎた顔を
両手で覆い・・キスをした。

その顔から涙がぽろん・・と
溜まって目尻から枕へと流れ落ちてる。

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