Under Tamiflu 灰色の天使
UTは ____________

まだ帰って来ない。
来客中だから遠慮してるのかな?


「_________え? 事故に?」

「うん、車の故障だったって。」


面会に来てた、危なっかしい
手つきで林檎を剥いてくれている
友達がそう教えてくれた。

彼女の紹介で知り合った、昨日
形だけの見舞い来ていた男。

その彼が此処からの帰り、
トラックと正面衝突。・・重体らしい。


"調子が悪いから・・。"


一度は断ったのに"早く"と
催促され、イヤイヤしてやった。

彼が求めたのは私の口と舌のみ。
ゲスな男は
欲求を満たさなければ帰らない。

どうせいつもウルトラマン並だ、
メンドウだし、
とっとと帰らせようと思ったから。

そんな男に
思い入れも何もある筈がない。

この彼女も実は知り合いな程度
であり私と彼がそんな関係だとは
知らないらしい。

だからまるきり他人事。アレコレ
事故の状況の事を話してくれるが、

(どーでもーイイですヨー♪)

私の頭の中では誰かが歌う、
"どうでもイイ歌"が
ずっとリピートしてるのに。

「怖いよねぇ、車もタマには
点検しとかないと。」

「あぁ・・そうだね・・。」

ナンだか・・私に関わる人達
ばかりが災難に合っている様な。

・・これって偶然だヨネ?

でも・・こんな偶然に感謝したら
バチが当たるのだろうけど

これで心穏やかに
残りの日を過ごせると・・
私はどこかでホッとしている。


「うわ、これ
ポータブルDVDプレーヤー?」 

「ああ、
知り合いが借りてきてくれたの。」

「はは、
その人ってSiaのファンなんだ?」

「さあ・・どこかの
教会の神父様の物だって。」


手を洗った彼女が
傍に置いてあるDVDを見て笑った。

その作品には全て、
お人形の様な顔、物憂げな瞳をした
同じ女優が出ている。

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