Under Tamiflu 灰色の天使
先生がその箱を手に取った瞬間、
私は空いた手でUTが差し出した
本をブン取り返してた。

んもぅ・・いったい何のつもり??

人知れず取り乱している私を、UTは
指を差し、リアクションのみで笑ってる。

解りやすく云うと、片手で
お腹を抱えて体を前後に揺らしてた。

イイ歳こいて、そんな悪戯する
もんじゃないっての・・よ・・、

「嬉しいな・・。」

「はっ??」

「有難う。まさか、
君から貰えるなんて・・。」

ガァーーーン、
箱の中身はチョコレート!??

しかも、先生とっくに
摘んで食べちゃってるYO!!

「嬉しい・・・ぅ、」

「姉原先生・・やだ、なんで
たたがチョコ如きでっ・・。」

あ・・どうしよう・・先生、
涙ぐんでるんだもん・・。

グスグスいいながらも、
上品そうな小さなブロック型の
チョコを噛締め・・また直ぐ、
口に入れたりして。

そんな彼に為す術なく私はただ
立ったまま、オロオロ。
やっとUTに助けを求める視線を
流し送ってみた。

『この男はこの男なりに、
ちゃんと腹くくってンのさ。
・・女冥利に尽きるじゃねえの。』

「・・・。」

『病状を知った上でのこった。
お前も女だったら・・この男の
その覚悟、最期まで
見届けてやったらいいじゃねえか。』

「そんな・・。」

『フフ、後で報告しろよな? じゃ。』

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