Under Tamiflu 灰色の天使
指を引き抜く時の僅かな蓋の音。

「「 ・・・あ゙!」」

彼が振り向いたのと、
私がパクついたのとほぼ同時で。

「いつの間に・・?」

箱を元に置き、ベッドの中に
即、非難するのだ。

掛け布団から
目だけを覗かせてる私に
"クッ"と笑った後の咳払い。

「他は食べないクセに・・、
喰えンだったら食えよ。」

お得意のつっけんどんで、
立ったまま私に
その箱を突き出すのだ。

笑みは沈み、首を傾げたUTが
やや心配顔に見えなくもない。

置いてあった林檎の皿に
ビニールが被せてくれてある。

彼には解っている様だ。

さては・・看護日誌でも
盗み見たに違いなかった。

身を起こした私はお言葉に
甘えようかと
彼の顔を窺いながら恐る恐る、
また1つチョコを口に運ぶ。


「美味しい、滑らかで・・・
手作りね? 誰から?あっ、モウ!」

ふざけた顔のしかめっ面で
また箱に入れようとしてた手を
蓋で挟もうとしたのだ。

挟まった所で痛くはない
のだけど、一瞬ツイ手を
引っ込めた私と笑い合ってる。

「フフ ・・・・・義理チョコさ。」

「フーン?
隅に置けない死神さんですコト。
ねえ、UT・・明日の朝、
剃髪式やるから居てくれるよね?」

チョコの着いた指をテッシュで
拭いてる私を、彼はぽかん・・と
見た後ようやく目元が綻んでくる。

「誰から聞いたンだ? 俺が
スキンヘッド・フェチだって。」

「まだ云うかっ・・。」

ちらっと見たメッセージカードの
字はとても可愛い字だったのに?

やっと座って、自分もチョコを摘み
口に入れると薄らに笑って見せた。

違う、UTが本当に思った事は
"本気なのか?"ってコトだ。

重くならないよう、
気を使ってくれたに違いない。
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