Under Tamiflu 灰色の天使
・・今日と明日だけの
戦いになるかもしれない

だけど
UTが傍に居てくれる__

生きる事を諦めるなと
教えてくれた変な死神さん

こんな事云ったら
怒られるかも知れないけど

背中を押してくれた
彼の為に闘おうって決めた

そして
私の事を心配してくれてる
姉原先生の為にも

ここを乗り切って、
ドナーを探すんだから・・、

ああ、お願いです
聖ペレグリン

どうか私に奇跡を授けて・・!

「失礼しまーす。植野さん、
今日は無菌室へ引越しね。」

「ええ。用意します。」

若いナースの明るい声。

朝のチェックと採血をしに
病室へ訪れてそう告げた。

暗くなりがちなこの病棟、
彼女らの元気ハツラツさを
前は凄く疎ましく思っていたのに。

「んー、熱も血圧もやっと安定
してきましたね。良かった。
今日から大変だけど頑張って。」

「うん・・、ありがとう。」

今なら素直に言える。
心の底から有難うって。

「じゃ、また後で。・・あ、
お早うございます。早川先生。」

「お早う。」

慌しく出て行こうとするナースと
入口でぶつかりそうになったのは
後任の新しい女医だった。

銀ブチの眼鏡を指で押し上げると
緩やかに微笑み、挨拶をした。

彼女からボードを見せて貰うと
ウンウン頷いて安堵の溜息を
鼻から吹き出している。


「検査結果がよければ明日にでも
地固めコースに入れますからね。」

「はい・・・!」

最初の治療ほど辛くはないと
先生は安心させてくれた。

壁際にもたれて黙って聞いていた
UTに思わず笑顔を送ってしまう。

彼は親指を余裕顔でグッ!と
立てて見せていたが

「じゃ、ちょっと失礼」

そう云って
女医が聴診器を掛け始めたので
私がパジャマを肌蹴ようとすると

クールだった筈の死神が
ドタバタと慌てて出て行った。

いつもみたいに
パッと消えたらいいじゃん・・。





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