教えて!恋愛の女神様
「とても大切にしている物を捨てる?」
私は怖くなった。そんな事できない気がした。
「大丈夫、自分を信じるんだ」
「…………!」
「絶対できると信じるんだ」
「信じる?」
「一つの痛みと引き換えに、お主は素敵な物を手に入れる。それはアタイが保障しよう」
さっき振られた男の顔を思い浮かべる。あいつは私が女なのをわかっていて、グーで顔を殴った。最高卑劣な男。本当に最低だ。絶対タダじゃおかない。
 でも今、反撃する事はできない。スキルが少なすぎる。助けてくれる腕っぷしの強い男友達もいない。ナイナイづくだ。
(こうなったら、この怪しい女の言う事を聞くしかない。そしてメチャメチャ良い女になって、私を振った事を後悔させてやる!)
両手に拳を作ると、震えるほどきつく握りしめた。女を見れば、先ほどまでの怒りは捨て深々と頭を下げた。背に腹は替えられない。
「よろしくお願いします。歯を食いしばってがんばります!」
「そうか、わかった。アタイも全力でがんばるよ」
女は満足そうに言った。私の心はやる気に満ちていた。
「ただし、条件がある」
「条件?」
貧乏学生の懐を脅すような言葉に驚いて顔を上げると、威圧的なまなざしで私を見ていた。私は急に怖くなり腰が引けた。
「条件って何ですか?私はしがない短大生です。できることなんて、たかが知れています。両親だって、小さな商店をやっているだけですからお金もないし」
「大丈夫だ。ショボイお主でも楽々やれる」
「楽々?」
「そうだ」
「な、何ですか?」
とたん、女は私のすぐ目の前に立ち、真上から見下ろした。ヤンキーのニラみで。
(こわーっ!)








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