教えて!恋愛の女神様
(ごちそうしないとな……)
そう思いつつも、閉じられている給与明細を開け金額を見たら……ごちそうする気が失せた。今月も先月同様、五万五千円くらい。いくら彼氏にフラれデートする機会が無くなったとはいえ、服とか靴とか化粧品とか欲しいものは一杯ある。遊びに行きたいところもある。
(できれば、ご馳走したくないな。そうしたら、もっとかわいい服とかパンプスとか買えるもん!)
一人心の中で葛藤した。ロマンスに『ダメだ!』と言われそうだが、やめたかった。
「知佳ちゃん、なんかあった?」
「え?」
「さっきからずっと給与明細表をニラんでいるから、出勤日数とか合っていないところがあるのかと思って」
「ま、まさか!そんな事ないよ。合っているよ。ちょっと考え事していただけ」
「そう、ならいいんだけど。違っているところがあるなら早く言った方がいいよ。お金に関しては、日が経つとめんどうな展開になる事が多いから」
「うん、ありがとう」
灯にいらぬ気遣いをさせてしまい、申し訳ない気持ちになった。今度悩む時はトイレにでも行って一人考えを巡らせようと思った。
 バイトが終わると、買った物を自転車のカゴに入れリュックを背負った。サドルにまたがれば、軽快にペダルをこいで家へ向かった。
 カゴに入れたのは、ロマンスの好物であるこしあんの串団子。裕矢の件で悩んだことが筒抜けになっている気がし、怒られないよう機嫌を取ろうと思った。
 マンションに着くとリュックの中から鍵を取り出し静かに開けた。帰ったら修行すると言っていたが、ロマンスが寝ていたら起こしてしまうかもしれないと思い、気を使った。
「うおっ!」
開けたらなんと!真っ赤な特攻服を着たロマンスが仁王立ちでドアの前に立っていた。履いているのは、私のお気に入りのビーチサンダル。靴箱の奥に入れておいたのに出したらしい。
「び、びっくりするじゃないですか!もう少し離れたところで待っていてくださいよ!」
「約束破ろうとしたおわびに団子で機嫌取ろうだなんて、セコい考え見え見えだわ」





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