教えて!恋愛の女神様
「え、医者なの?」
「まあ一応」
「どこの病院に勤めているの?もしかしてC大の卒業生?」
「いえ、父が通っていたのはT大です」
「マジで!めちゃめちゃ優秀じゃん!俺なんて、T大の受験落ちてC大に来たのに……。で、お父さんはどこの病院にいるの?もしかしたら、研修とかでお世話になるかもしれないから知りたいな」
「もう総合病院には勤めていないんです。私の実家があるのは神奈川県の江の島なんですけど、そこで開業してボチボチやっています」
「江の島!俺も江の島出身で、ずっとそこに住んでいたんだけど。……君の名前は何ていうの?」
「松本です。松本灯」
「もしかして、お父さんは松本皮膚科の医師?」
「そうです」
「やっぱりそうだ!うわー、ビックリしたな。こんなところで地元の人に会うなんて」
「江の島の出身同志、仲良くしてくださいね。」
「もちろんだよー。めっちゃ仲良くしちゃうよ!ぜひ、これからよろしく!」
「おい、土井。下心見え見えだよ」
「見ちゃって見ちゃって!そして俺の愛を感じちゃって!マジ、損はさせないから」
その場にいた全員、大笑いした。翔太の友達である土井君は、笑いのセンスも最高だった。
「やっぱり知佳だ!」
ふいに、聞きなれた男性の声がした。私はイヤな予感に、全身鳥肌がたった。相手が誰なのか確認せずこの場から逃げたかった。
 しかし、見ずにいられなかった。今まで楽しそうに話していた人全員、声のした方を見た後、確認するよう私を見たから。
「…………!」
おそるおそる振り返ると、案の定、そこによく知った人が立っていた。
「久しぶり、知佳」
「鉄平!」
前の彼氏、河合鉄平だった。私の体だけが目当てだったサイテーな男。あまりの悲惨な過去に思い出しただけで、全身がぶるぶると震えた。
「なんで…いるの?アンタ、T大生でしょ?」
そう言うと鉄平はニヤリとイヤらしく笑い、翔太の肩へ親しげに手を置いた。






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