教えて！恋愛の女神様

私は自分で自分を抱きしめた。怖くてしょうがなかった。知らないうちに、全身がブルブルと震えていた。
（体だけ求められてフラれるのはイヤ。そしてフラれたのを納得しないからって、顔を殴られるのはイヤ！またフラれたら、きっと私も自殺する。だから鉄平には二度と会いたくない。会いたくない！）
一度大きく身震いすると、すごい勢いでベッドに入り頭から布団をかぶった。絶対音が聞こえないよう耳をふさいで。
　ややしばらくの間、チャイムは鳴り続けた。そのうちドアを『ドンドン！』と叩く音が聞こえ、『知佳、俺、鉄平だよ。いないの？』と叫ぶ声も聞こえた。
（やっぱり鉄平！そんな事したって、私は出て行かないよ。あきらめて帰って！）
しかし、なかなか帰らない。今度はピンポンピンポンとチャイムを鳴らし、ドンドンとドアを叩き、しまいには携帯に電話をかけてきた。すごい執念だ。
（そこまでしてエッチしたいの？誰でもいいからしたいの？でも、私はもう付き合わない。あなたの思い通りにならない。そこまで女が必要なら他をあたって！）
心の中で叫んだ。直接言いにはいけないが、いなくなって欲しかった。
　だがしかし、鉄平はしつこかった。なかなかあきらめようとしない。私が居留守しているのをわかっているかのように、チャイムを何度も鳴らし、携帯に電話をかけてきた。
（しつこい！本当にしつこい！なんかだんだんイライラしてきた。……そうだ！警察に電話しよう！『迷惑な人が来ているから、追い返して欲しい』って。連絡すれば、すぐかけつけてくれるはず。鉄平だって、いくらなんでも警察がくればあきらめて帰るに違いない。よし、かけよう！）
やる気満々で、しかし鉄平に聞こえないようそっと布団をめくりベッドから出た。
　すると、部屋の真ん中に置いたテーブルの前に座ったロマンスと目が合った。ロマンスは心配しているような、様子を見ているような、どっちともつかない表情で私を見ていた。
　ふと、ある考えがひらめいた。
（ロマンスに『助けて』って言おうか？ロマンスに『助けて』って言おうか？）
どんどんひどくなる鉄平の攻撃に追い打ちをかけられ思う。チャイムが鳴るごと、頭も心もどんどん苦しくなっていく。一人では勝てない気がした。
「なんだ、知佳。言いたいことがあるなら言え。アタイは知佳を責めたりしないよ」