教えて!恋愛の女神様
「ありがとう。そのね……」
私は一度目をそらし、深呼吸するとロマンスの顔を見た。そして、二人ともささやくような声で言った。
「助けて欲しいの。今、チャイムをしつこく鳴らしたり、携帯に電話をかけてきているのは、元付き合っていた彼氏なんだけど、たぶん復縁したいんだと思うの。でも翔太君が言うには、復縁してもまたすぐ飽きて捨てちゃうんだって。私、二度とかかわりたくないの。でも今出て行ったら押し切られて復縁しちゃうかもしれないから、出たくないの。ねえ、彼を……鉄平を追い払ってくれる?」
「それはかまわんが。ただ追い払うだけではダメだぞ。そういう奴は、とどめを刺さないと何度でもやってくるぞ」
「わかってる。でも、どうすればいいかぜんぜんわからないの。お願い、ロマンス。私を助けて!」
「さて、どうしようかの。モテ子になるための修行を受けた条件は、『神社にお願いして願いが叶ったら、お礼参りしましょう』と多くの人に言ってもらうだが、今回は見返りが何もない。こんだけ大騒ぎしている男を追っ払うだけでも大変な労力がいるのに。タダ働きは辛いな。ああ腹も減ってきたし、困ったもんだのう」
「神様なんだもの。こういう時くらい、見返り求めないで助けて下さいよ!」
「神様だって欲しいものは欲しいんだよ。タダ働きなんてイヤだよ!」
「でも、貧乏学生だから高い物はあげられませんよ」
「大丈夫。貧乏学生だって買える物を所望するさ」
ロマンスはニヤリと笑う。私は『アレだ』とひらめく。
「串団子二十本でどうだ。内訳は、みたらし十本、あんこ十本だ。なに、ぜいたくは言わぬ。知佳のバイト先で売っている物で十分だ。明日の夜、待っているからな」
「団子二十本!た、高い!」
「いやなら別にいいぞ。ここ最近信者を増やしたからな。彼らのところへ行けば、知佳と違って好待遇だ。団子の百本や二百本、さっくり収めてくれるさ」
「汚い、そのやり方……」
「さあ、どうする?収めるのか、収めぬのか?」
「お、収めればいいんでしょ?収めますよ。ええ、サックリ!これでも稼いでいるんですから。団子の二十本や三十本くらい、余裕で買えますよ!」
「もう後戻りはできんぞ。アタイは記憶力がいいからな。『言ってない』とは言わせぬぞ」




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