教えて！恋愛の女神様

「たしかに」
「自分を極限まで磨け。外見も中身もだ。あのダメ男をあっさり振ってハイレベルの男と付き合え。それが最大の復讐だ」
「わかりました。ロマンスの言う通にします。今回はガマンします」
「良い子だ。素直であることは、いくつになっても大事だぞ」
ロマンスは私の背中をポンポンと叩いてくれた。『見ているからな』と言われたようで、とても嬉しかった。
　とたん、外があわただしくなった。駆けて去っていく足音が一つしたかと思えば、それを追いかけていく足音も聞こえた。
「何かあったのかな？」
「今井め、やりおったな」
「はい？」
ロマンスは不敵な笑みを浮かべドアを見た。
「まあ、今回は大目に見てやるか。かわいい信者のためでもあるし」
「今井さん、何をしたんですか？」
「下の階に住んでいる男をチョイと操って、知佳の元カレを懲らしめてやろうとしているのさ」
「操る？」
「そうだ。あの鉄平と言う男、なかなか良い感をしておる。知佳が居留守しているだけでなく、チャイムやドアを叩く音をうるさがっているのが他の住人ではなく、知佳だと気付きおった。今、部屋の前を去って行ったのも、今井がでっち上げた『階下の住人が通報してきた』かどうかの裏を取るためだ」
「そうなんですか！」
「動物的カンと言う奴だろう。厄介な力を持ったもんだ」
「今井さん、大丈夫ですか？」
「もちろんだ。あいつの取柄は真面目だけじゃない。仕事もできる。大船に乗った気でいろ」
「はい」
私は一抹の不安を抱えつつも、ロマンスの言葉を信じるしかなかった。
　そのころ、階下に住む男性の部屋にたどり着いた鉄平は、午後十一時三十分を回っているにもかかわらずチャイムを鳴らした。もちろん、一度も会った事も、しゃべったこともない。『失礼だ』と怒鳴られても文句を言えなかった。
「はい」
案の定、ドア越しに聞こえてきたのは、不機嫌な男性の声だった。
「こんな夜中にすいません。でも、どうしても聞きたい事があるんです」
ガチャッと渇いた音をたて、ドアは開いた。顔を表したのは、十代後半から二十代前半の男性。長袖Ｔシャツにジャージを履き、短い髪型のいでたちは、大学生のように見えた。