教えて!恋愛の女神様
ハッとしてスチールラックの上に置いた時計を見れば、信じられない時間になっていた。
「ひ、七時十五分!待ち合わせまで三十五分しかない!」
身支度に時間のかかる私は、血の気が引いた。このままでは服を着てメイクをしただけで終わってしまうかもしれない。髪のセットまで間に合わないかもしれない。
「ヒェーッ!急がなくちゃ!」
叫べば、ロマンスに教えてもらったコーディネートの服をそのまま着て、大急ぎでメイクをした。あまりの緊張に、心臓がバクバクと激しく鼓動を打った。
(寝坊して講義に遅れそうになって必死にメイクした事があるけど、あの時は男に会うわけじゃなかったから適当に済ませた。ヘアーもそう。でも今は違う。好きな男の子に会うから、適当になんてできない。勝負メイクじゃないとダメ!勝負ヘアーじゃないとダメ!)
しかし、焦れば焦るほどうまくいかない。手は震え、変な汗が出てすぐに化粧が崩れそうだった。
(ロマンスと口ゲンカしている場合じゃなかった!こんな事になるなら、素直に聞いていればよかった!)
後悔先に立たず。修行しているわりには、まだまだ進歩が足りないと痛感した。
 それでもなんとか五十分にメイクとヘアーのセットをすませた。
(よかった、終わった!)
一息ついたとたん、携帯電話の着信メロディーが鳴った。テーブルの上に置いた携帯電話のサブディスディスプレイを見れば、『翔太君』の名前が表示されていた。
(約束通り来てくれたんだ!)
私はウキウキして携帯電話を手に取り、通話ボタンを押した。
「もしもし、翔太君?」
『ああ、俺だよ。予定通り学校前のバス停に着いたよ。家の場所を教えてくれる?』
「うん!うちから大学までは二十分くらいかかるんだけど、道はわかりやすいんだ」
『そうなんだ』
「うん。今、乗ってきたバス通りを大学がある方向と反対側に、道なりに十五分くらい歩くの。そうしたら、右手にコンビニがある交差点が見えてくるから、コンビニ側へ渡って。そして、コンビニに沿って伸びる道を歩いて行くと、ミントグリーン色の壁のマンションが見えるから。そのマンションの三階、三〇二号室が私の部屋なの」





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