教えて!恋愛の女神様
「……考えてみます」
私はちょっとシュンとなった。ロマンスの言葉はもっともだと思ったが、翔太をあきらめきれなかった。
 すると、ピンポーンとチャイムが鳴った。時計を見ればまだ午前八時ちょっと過ぎ。
(きっと翔太君だ!)
スキップするようドアに近寄ると、スコープをのぞいた。その向こうに見えたのは予想通り翔太だった。急いでドアを開ければ、荒い呼吸を繰り返す彼が立っていた。
「翔太君!ずいぶん早く着いたんだね。もしかして走ってきた?」
「正解!鉄平がまた来たら困ると思ってさ」
「ありがとう!翔太君、優しいんだね」
「そう。走ってきたかいがあったな」
翔太はニッコリ笑った。私の胸はキュンとなった。ますます彼を好きになった。
「じゃあ、少し早いけど、行こうか」
「うん!」
笑顔でうなずくと、部屋の中へ勉強道具の入ったバッグを取りに戻った。
 部屋の中にロマンスの姿はなかった。携帯電話を手に取り彼女からメールが来ていないかチェックしたが、それもなかった。
(教えてもらった事を思い出しながらやってみようか)
ふとわいた不安を振り切るよう鞄を持つと、部屋に鍵をかけ翔太とともに学校へ向かった。彼の笑顔を見ていたら、イヤな事はすぐ忘れた。
 しかしその不安はトラブルが起こる前兆だった。幸せすぎた私は、第六感が発する警告を聞き逃してしまった。
 私は翔太の左隣を歩きながら、チラチラと彼の様子をうかがった。
(インディゴブルーのジーンズに黄色の半そでパーカー、重ね着風で緑色のTシャツ、緑色がベースの野球帽!スニーカーの色は白で、コーディネートはバッチリね!すっごくオシャレ!顔も頭も性格も良いし、本当、パーフェクトって感じ!)
ムフフと彼に気づかれないよう笑った。翔太は私の視線に気づくことなく、あちこち様子を見ながら歩いていた。
「翔太君、あちこち見ているけど、どうかしたの?何か探し物?」





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