教えて!恋愛の女神様
再び私と翔太は並んで歩き出した。正門から中央棟までは、直線で百メートル。その途中、左右に図書館と第二食堂が建ち、朝日を浴びて輝いている。一講目の講義に出る予定らしい学生は、それらを見ながらのんびり歩いている。今日は天気が良いせいか、ほとんどの人は笑顔かノホホンとしている。見ているこちらまで平和な気持ちになった。
 あまりに平和で幸せすぎたせいか、突然目の前に現れた矢井田エリカが幻に見えた。恐怖の一言を発しても幻かと思った。
「翔太、その女と何してんの?」
「それは……」
鋭いエリカの一言に、私も翔太も急に現実へ戻った。
「『それは』何?昨日の夜、『明日の月曜日の朝、一講目がないから私のレポート書くの手伝ってあげる』って言っていたのに、朝になったら『急な用が入ったからダメになった』って言ったでしょ?その急な用ってのが、この女関係なの?私のレポート書くのをキャンセルするほど重要な事なの?」
「う、うん。そうだよ」
「うん、そうだよ?とてもそうは思えないけど。こんな冴えない女、私のレポート制作と天秤にかけられるほど価値があるなんて考えられない」
「エリカ、それはひどいよ。口には出さなくても、みんなそれぞれ問題をかかえているんだよ」
「そんなの知らない!って言うか、理解したくもない。彼女の私を差し置いて他の女の面倒を見るなんて許せない!」
「ドタキャンして悪かったよ。この穴埋めは必ずするから、今日はもう許して」
「イヤ!この女と二度と会わないと約束して。約束してくれないなら、別れる」
(ええっ!)
私はびっくりしてエリカを見た。
(彼氏が譲歩しているんだから、許してあげなよ。別れるなんて言っちゃダメだよ)
「この子は……知佳ちゃんは今、大変なんだ。落ち着くまで朝の見送りくらい許して欲しい」
「イヤよ。たとえ殺されそうになっていたって知らない。だいたいそういうのは、警察の仕事でしょ。彼氏でもない翔太が出る幕じゃないわ」





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