教えて!恋愛の女神様
「エリカ……」
翔太はひどく困っていた。しかしエリカはキリリと私をニラんだ。私は軽く身震いした。
「翔太は私の男よ。気安く近づかないで」
「そんな、気安くだなんて。翔太君は困っている私を助けてくれただけだよ。良い人だよ」
「私、こう見えて嫉妬深いの。お茶を飲むどころか、メール交換だって許さない。翔太には、私だけ見ていて欲しいの」
「エリカの事はいつもちゃんと見ているだろ。そんなに心配しなくても大丈夫だよ」
「だったら心配するような事しないで!私が嫉妬深くてさびしがり屋なの知っているでしょ?」
「それはそうだけど……」
「とにかく、この女とは二度とかかわらないで!」
エリカは腹の底から絞り出したような声で叫んだ。迫力ある声に、登校してきた学生は全員足を止め、ビックリした顔で見ていた。ただ私はビックリするのと同時に『勝手な女だな』と思った。いつも翔太をぞんざいに扱っておきながら、他の女に目が行けば『こっち向いて』とダダをこねる。
(まるで子供だな。私が彼氏でも、他の女のところへ行くかも)
「知佳ちゃん!」
すると、イヤな空気を裂くよう、誰かが私の名を呼んだ。声のした方を見れば、図書館から白衣を着た裕矢が走って来るのが見えた。後ろには同じように白衣を着た男性がもう一人いた。私はガッカリした。
(翔太君と引き離されそう……)
裕矢は私のそばまで来ると、軽く息を弾ませ心配した様子で見た。そして翔太を見た。
「何があったんだ?」
彼の声は心なしか冷たく感じた。
「大した事じゃない。俺がヘマをしてエリカを怒らせただけだ」
「それにしては、エリカちゃんの怒り方普通じゃなかった。ひどい仕打ちをされて怒っているみたいだった」
「さすが、裕矢さん。私の声を聞いただけでどんな状態かわかるなんて。翔太とは格が違うわ」
エリカが言うと、翔太はシュンとなった。エリカは『ざまあみろ』と言った顔をして、謝る気はなさそうだ。私は翔太がかわいそうでしょうがなかった。







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